グランドサークルの地形 アメリカ合衆国

日本国内と海外の地形を特に区別して見ているつもりはありません。地球という視野で考えると、むしろ区別する方がおかしいことだと思います。ただ実質問題として、海外の取材は費用と時間がかかるので国内ほど気軽には行けません。海外の取材先を選ぶ時は、国内では見られない地形であること、地球の成り立ちにかかわるテーマであることを考慮しています。2018年のヨーロッパアルプスは、山岳氷河とその氷食地形を見ることでした。今回のアメリカのグランドサークルは、安定した地塊の造形を見ることです。変動の激しい日本列島ではありえない数億年分の地層の堆積を見てみたいと思いました。

世界中から観光客を集めるアンテロープキャニオン。砂岩の造形に柔らかい間接光が差し込み、誰もが経験したことのない神秘的な空間が現れます。

グランドサークルとは  Grand Circle

一般にはあまり知られていない言葉かもしれませんが、旅行業者の間では極めてポピュラーな言葉です。アメリカの南西部にあるユタ州、コロラド州、アリゾナ州、ニューメキシコ州にまたがる国立公園、国定公園の密集地のことを言います。広大な国土と多様な文化を持つアメリカにあって、「グランドサークル周遊」はいつも上位に入る人気の旅行テーマです。

半径約250kmのサークルの中には、国立公園が10ヵ所、国定公園が16ヵ所があり、それ以外にもナショナル・モニュメントとして、人気のアンテロープ・キャニオンやモニュメント・バレーなどがひしめきます。仮に10日間の日程が取れたとしても、その半分が見られるかどうかの規模です。

グランドサークルの位置図です。おもだった地名を日本語で書き込もうとしましたが、多過ぎて煩雑になるのでやめました。記載したのは今回私がまわったところ+周辺の国立公園のみです。取材行程は、成田=ロスアンゼルス=ラスベガス=グランド・キャニオン=アッパー・アンテロープ・キャニオン=ホースシューベンド=バーミリオンクリフ国定公園=ブライス・キャニオン=アンテロープ・キャニオンX=ラスベガス=ロスアンゼルス=成田です。

多くの観光客であふれるグランド・キャニオンの展望台。

コロラド高原とグランド・ステアケース

グラントサークルの地形を理解するためには、コロラド高原とその下の地質構造であるグランド・ステアケース(大いなる階段)について知っておく必要があります。

■コロラド高原 Colorado Plateau

地球上の大陸は絶えず移動をし、衝突と分離を繰り返してきました。その激動のなかでこのコロラド高原一帯は、約6億年前から現在まで大きな地殻変動がなく安定した地塊として存在してきました。まわりに目を向けると東にはロッキー山脈がそびえ、西側には地殻が伸びる「ベイスン・アンド・レンジ」と呼ばれる変動帯が広がっています。静かなコロラド高原に対して、その周囲はかなり騒がしいと言えます。それらの干渉を受けることなく約6億年間も無音で過ごしたのです。これこそが奇跡であり、数々の絶景を生み出した源なのです。

コロラド高原の分布図です。ほぼグランドサークルのエリアと重なります。中央に流れるのはコロラド川とその支流で、それらが高原を侵食することで断面を覗くことができます。

■グランド・ステアケース    Grand Staircase

コロラド高原の地下は、最下層となるテピーツ砂岩層が堆積した約5億2千万年前から、最上層となるクラロン層ができた6300~4000万年前にかけての地層が美しい縞模様として積み重なっています。

堆積層を構成する岩石はおもに石灰岩、砂岩、泥岩からなるので、その間の大半は海中に沈んでいました。ただグランドキャニオンに露出する各層の年代を調査した結果、途中で約10億年分の地層がなくなっていることが判明し、何度かコロラド高原は隆起し地上に姿を現して風化浸食を受けていたことがわかっています。

グランド・ステアケースを直訳すると「大いなる階段」とでもなるのでしょうか。約7000万年前、コロラド高原はもちろん北米大陸一帯は隆起を始めます(ララミー変動)。海中から浅瀬、そして陸化し、2000万年前には今のグランドキャニオンあたりが激しく隆起し、地層全体は模式図のように南上がりに大きくたわむことになります。その後、地表の侵食により各層の境目が断崖となって地表に現れます。その様子が階段に見えたことから「グランド・ステアケース」の名称がつきました。

下の地質模式図は、この地図のAとBの断面を想定したものです。

コロラド高原の地質の様子を示した「グランド・ステアケース」の模式図です。全体的には南上がりに傾斜をしており、特にグランド・キャニオン周辺では、隆起量も多く表層の地層はすでに浸食されてなくなっています。またその途中の地層も斜めになっていることで、各層の境目が断崖となって現れています。それらが階段状になっていることからステアケースの呼称が当てられました。

もう一度上の地図を見て下さい。グランド・キャニオン(B地点)を出発し、北へ向かうとホワイトクリフを侵食してできたアンテロープ・キャニオンやザイオン国立公園の峡谷があります。そして最上層のピンククリフにはブライス・キャニオン(A地点)の土柱が断崖に見られます。グランド・ステアケースの模式図が頭に入っていると、それぞれの絶景に繋がりが感じられ、まさに日本では経験できない大きな大地の営みを実感することができます。

移動中のバスの車内から撮影した国道沿いの地層です。車窓には延々とこのような地層が続き、グランド・ステアケースの大きさを肌で体感します。

この写真も同じくバスの車窓から撮影。カナブからラスベガスへの移動途中にて。

グランド・キャニオン国立公園  Grand Canyon

約600万年前から地表を削り始めたコロラド川は、現在1500m下の谷底を流れています。川が削った断崖には約15億年分の地層が現れました。はるか地平まで続くその地層を見るために、世界中から人々がやって来るのです。

マーサー・ポイント(Mather Point)から見る朝のグランド・キャニオン。光が斜めからさす朝と夕方は、一日のなかでも特別な時間です。

デザート・ビュー(Desert View)から眺めるグランド・キャニオンの夕景。眼下に見えるのはコロラド川。たった1回の夕景撮影のチャンスをどこで撮るか、ビレッジ周辺が無難なのは予測できましたが、景観の雰囲気を変えるために思い切ってデザート・ビューまでやって来ました。結果、正解でした。

ブライトエンジェルロッジ(Bright Angel Lodge)裏の展望所から見たグランド・キャニオン。コロラド川に流れ込むブライトエンジェル・キャニオンを正面に望みます。

パウエルポイント(Powell Point)付近のリムトレイルより。トレイル沿いは乾燥に強いイブキ系の針葉樹が目立っていました。

標高約2000mのグランド・キャニオンの地表面。カイバブ台地の隆起面が地平まで続いています。その所々に峡谷が刻まれているのがわずかに見えています。

■グランド・キャニオンの地層と地質

グランド・キャニオンの地質の模式図を実景と重ねてみました。最上層のカイバブ石灰岩層は、渓谷対岸のノースリムの最上部に白く見えています。よく目立つのは、ココニノ砂岩層の白とレットウォール石灰岩の真っ赤な岩の層です。共に硬質な岩石なので渓谷内では断崖となっているのですぐにわかります。

よく「地球20億年の時間を一望する」というような観光用のフレーズを目にしますが、若干誇張があると思います。この写真で見えている大部分は、約5億年前のテピーツ砂岩層から約2.6億年前のカイバブ石灰岩層までで、約2.4億年分しかありません。もちろんそれでも凄いことですが・・・。 約18憶年前後の古い地層はコロラド川が現在侵食中で、川沿いにしか見えません。ブライト・エンジェル・ロッジ裏より撮影。

ホピポイント(Hopi Point)付近から見下ろしたコロラド川です。眼下のコロラド川が侵食するV字谷の両岸が、約18億年前(年代については諸説あり)のグランド・キャニオンで見られる最古の地層です。ここからは真っ赤なハーミット頁岩層(約2億7千万年前に堆積)を前景に、コロラド川の川面付近の地層まで、約15億年分の時間の集積が見渡せます。

画面中央の三角形の岩山の山頂に白く乗っているのがココニノ砂岩層です。硬質なので侵食に耐えて最後まで残ります。その下、画面中央でスポット光を浴びた赤い断崖がレッドウォール石灰岩層です。このふたつの層をたどることで大まか年代がわかります。ホピポイント付近にて撮影。

マーサーポイント付近のカイバブ石灰岩層。

ヤバパイポイント(Yavapai Point)展望台の足下の地層。約2億6千万年前の地層を至近距離で見ることなど日本では無理です。

硬い地層は残り、柔らかい層は崩れて斜面になっています。硬い層も下の支えが亡くなると節理から崩落していくのでしょう。

デザートビューから見る大岩壁。これを見るためにここまでやって来たと感じました。

■月光でグランド・キャニオンを撮る

撮影当夜は満月の4日後でした。ラスベガスの月の出時刻を調べ、その1時間前に現地に到着できるようホテルを0時に出発しました。まずは月が出る前に星空のみを撮影。その後は月光を利用してグランド・キャニオンを撮りました。月の出直後の赤い月で撮ると被写体は朝焼けのように真っ赤になります。そこに期待をしていました。宿泊したヤバパイロッジから撮影場所のマーサーポイントまでは約2kmの距離、夜道を約30分歩いて移動です。野生のピューマに気をつけてと脅されましたが大丈夫でした。

月の出前の天の川です。SNSでは過度に明るく画像調整した天の川の写真を見ますが、これはほぼ見た目どおりです。でもそれより感激したのは、地平線付近に街明かりなどの光害が一切ないことでした。沖縄の離島に行っても経験できなかった本当の夜の漆黒をここで経験しました。写真に写る地平線のオレンジ色の光は、最初は遠くの街明かりかなと思っていましたが、月の出直前の空の彩りでした。NikonD850  24-120mmf4  ISO1600 f4  30秒  AWB

月が出ると辺りは急に明るくなり、星の数も減っていきます。本当はもう少し谷底まで月の光が入って欲しかったのですが、これ以上続けると昼間のような明るい写真になってしまうので、ここでシャッターを閉じました。NikonD850  24-120mmf4  ISO100 f4  930秒  AWB

今度はグランド・キャニオンを主役にするために50mmレンズを使っています。光害がないので地平線のすぐ上の星が写ってくれたことでかろうじて夜の写真に見えます。NikonD850  50mmf1.4  ISO64 f2.8  240秒  AWB

■グランド・キャニオン 旅の点景

マーサーポイントのトレイル入口にある石碑。

マーサーポイントのバス停。ポイント間の移動はこのシャトルバス(無料)と徒歩の併用になります。バスは頻繁に運行しており、日の出前から日没後まであるので、写真撮影にも支障ありません。

ヤバパイポイントの展望台。岬状に突き出たリムには展望台が何ヵ所も設けてあります。各展望台の間は、断崖沿いにリムトレイルが通っており、そこからの眺めも見事です。

ブライトエンジェルロッジのロビー。ビレッジに建つ老舗ロッジです。裏の展望台からもグランドキャニオンが一望でき、もしここに泊まれるなら夜間撮影も安全に楽しめます。

サウスリムの東端にあるデザートビュー。ビレッジからは車で約40分の距離です。シャトルバスの運行がないのでアクセスはレンタカーのみとなります。

アンテロープ・キャニオン  Antelope Canyon 

アンテロープ・キャニオンがある「ナバホ砂岩層」は、およそ1億8千万年前に風で運ばれてきた砂が堆積してできました。最大で厚さ600mにもなるこの砂岩層の砂の供給源についてはずっと謎でしたが、砂岩に含まれるジルコンの放射性同位体がアパラチア山脈のそれと一致したのです。 信じられないような話ですが、大陸の東海岸沿いにそびえるアパラチア山脈の砂が、川と風によって2500km離れたコロラド高原まで運ばれ、約1500万年の時間をかけて厚さ600mの砂岩層を作ったのです。因みに福岡と札幌の直線距離が約1400kmです。なんだか日本に住む私には数字のスケールが大きすぎてイメージもわきません。

コロラド高原の隆起により地表付近に露出したナバホ砂岩層は、岩の裂け目に浸み込んだ雨によって少しずつ削られ、幅の狭い渓谷(スロットキャニオン)を形成しました。これがアンテロープ・キャニオンです。

アンテロープ・キャニオンの人気の高さは、写真投稿サイトの世界的な活況もあり目を見張るばかりです。私が行った5月末頃は、ちょうどメモリアル・デーの連休と重なったこともあり、受付の事務所前の駐車場はものすごい数の車と観光バスでした。京都の社寺の紅葉と同じく、人の頭から上を狙うしかないかなと半ばあきらめに似た気持ちになりました。

アンテロープキャニオンには、「アッパー」と「ロウワー」の2か所の渓谷が観光地として公開されていましたが、増え続ける観光客に対応するためか、2016年から「X(エックス)」と呼ばれる第三の渓谷の公開も始まりました。今回は天井から指す光(ビーム)で名高いアッパーと、新しくまだ穴場感が残るXの2か所を撮影しました。

■アッパー・アンテロープ・キャニオン  Upper Antelope Canyon 

太陽が南中高度付近まで達した時、地上に開いた谷の開口部から日光が渓谷内に差し込みます。これを「ビーム」と称し、アッパー・アンテロープ・キャニオン観光のハイライトとなっています。太陽が天頂近くまで上がる夏季限定の光景です。

渓谷の岩肌。砂が堆積した時の痕跡が筋として現れます。堆積と侵食、時間を隔てたふたつの出来事が出合うことで美しい独自の造形を見せてくれます。

渓谷の底から開口部を見上げています。その高さは平均で15mくらいでしょうか。層理面(地層と地層の境目)と侵食による曲面のコラボレーション、それを柔らかく照らす間接光の反射が未体験の空間を浮かび上がらせていました。

雨水の流れた跡です。ふかふかの砂地に少量の雨が降って流れたのでしょう。

アンテロープ・キャニオンはナバホ族居留区にあり、その管理もガイドもすべてナバホ族が行っています。ページ(Page)郊外のツアー事務所で受付を済ませ、専用車に乗換えてガイドと共に渓谷内に入ります。個人での立ち入りは不可です。

アッパー・アンテロープ・キャニオンの入口周辺の風景です。一面に広がる赤い砂地と小高い岩山が続きます。

アッパー・アンテロープ・キャニオンの入口です。世界中の絶景ファンが恋焦がれる空間があの裂け目の向こうで待っています。

砂漠に咲くサボテンの花です。可憐さはなく、たくましさを感じました。

■アッパー・アンテロープ・キャニオンの撮影ガイド

結論から申し上げると、今回は現地の「フォトツアー」を利用しました。一日に数回しか実施されないので、できるなら日本で予約した方がよいでしょう。特にビームが現れるお昼頃のツアーは予約必至だと思います。

では一般の観光ツアーと何が異なるか? まず三脚が使えます(観光ツアーでは使用禁止です)。手持ちであってもISO感度を上げて、絞りを開ければ対応できますが、それでも暗いシーンやハイキー調に仕上げようと思ったら三脚が欲しくなります。渓谷内の滞在時間もフォトツアーの場合は長くなります。観光ツアーはだいたい30分程度ですが、私たちは約2時間以上現場にいました。これは気持ちの面でゆとりになります。そしてこれが最大のメリットですが、同行するガイドさんが観光客が写り込まないように通行整理をしてくれます。対面から来る人達も死角まで下がらせてくれるので、人が写真に写り込むことはありませんでした。またビームの位置なども的確に案内してくれて実にスムーズに撮ることができました。料金は一般ツアーの2倍以上もしますがその価値は十分あります。

一般的な注意点としては、渓谷内は砂埃がすごくレンズ交換はできません(撮影後は機材のメンテナンスをお忘れなく)。また持ち込む荷物も厳しく制限され、カメラザックは不可です。これは砂岩を傷つけないためで、フォトツアーであっても許可はおりませんでした。私は一眼レフカメラ1台とレンズ1本、三脚、ブロワー、防塵用の大きなビニール袋、ペットボトルだけを持って入りました。

レンズはおもに広角レンズを使用します。私は24~120mmの標準ズームレンズを付けて入りましたが、帰国して撮影データを見るとほぼ24mmでしか撮っていませんでした。現場ではもっと広角が欲しいと感じたので、思い切って14~24mmでもよかったかもしれません。ここは各自の好みがあるので判断はお任せします。

キャニオンXについては、ほとんど人混みはありませんでしたが、三脚の使用OKと滞在時間が長いこともあり、こちらでもフォトツアーを利用しました。

■アンテロープ・キャニオン X   Antelope Canyon X

渓谷の雰囲気自体はアッパーと大きな違いは感じませんでした。ただこちらの方が渓谷の背が高く、開口部が広いので、間接光による反射の魅力は感じませんでした。でも空いているということは大きなメリットです。個人的には砂岩の造形の魅力をじっくりと堪能しました。

狭い渓谷の底です。ここを時に鉄砲水が襲い、岩肌を侵食していきます。

天井を見上げます。渓谷の背が高く、地上の開口部が広いので、アッパーほど閉じられた空間にいる感覚はありません。光も方々から入るので間接光の魅力も少し劣ります。

渓谷入り口の岩壁には、斜交層理が見られます。斜交層理とは、堆積時にできる筋が層理面(地層と地層の境目)に対して斜めになっている状態を指す言葉です。それにより堆積時の水流や風向きなどがわかります。

アッパーの受付事務所からさらに10分ほど郊外に行ったところがXの出発点になります。ここも専用車に乗換えて、ガイド同行で行動します。

駐車場から谷底に下る坂道をおりていくとT字路にあたります。右へ行くとサウスキャニオン、左はノースキャニオンにわかれます。混雑状況を見てどちらを先にするかガイドさんが決めてくれます。

ホースシューベンド  Horseshoe Bend

コロラド川が主役となる代表的景観と言えばホースシューベンドです。馬蹄形に大きく蛇行して流れる様は大河を象徴しているように感じます。アンテロープ・キャニオンからも近く、合わせて計画を立てるとよいでしょう。国道89号線沿いに大きな駐車場があり、そこから展望台までは整備された道を徒歩で約15分です。日陰はないので帽子と飲料水を忘れないように。

私が立ち寄ったのは、5月下旬の午後3時頃です(日没は午後7時30分ごろ)。特に計算をした訳ではありませんが、地形を説明するには最適な光線状態でした。もう2時間後だと逆光で影が多くなりスケール感が出し難くなったと思います。また午前中は完全な順光で、これも立体感を出すのに苦労しそうです。1日を通して見ていないので断言はできませんが、正午から日没の3時間前ごろまでがよいのではないでしょうか。

蛇行の様子を損なわないように配慮しながら、前景を入れてみました。そこに立っているかのような臨場感が出たと思います。またどのような岩石でできているかと言う説明にもなります。

あたりの砂漠の様子です。高木は見当たらず、背の低い草が密集して生えていました。

ホースシューベンドの全景です。全体を入れるために20mmの超広角レンズを使っています。断崖の縁に立つ勇気はないので、地面にビニール袋を敷いて腹ばいで身を乗り出して撮りました。

高さ300mの断崖の上ですが柵などは設けてありません。転落事故もあるそうです。

バーミリオンクリフ国定公園  Vermillion Cliffs

ザ・ウェーブ(The Wave)という絶景をご存じでしょうか? 名前の通り砂岩の模様が超絶に美しい曲線を描いているポイントです。しかし有名になり過ぎて今では砂岩保護のために、所在地は一切非公開、1日の立ち入り人数もくじ引きによる20名のみと厳しい管理下に置かれています。そのザ・ウェーブがあるのが、ユタ州とアリゾナ州にまたがるバーミリオンクリフ国定公園です。ここには未知の奇岩が多数あり、写真家や絶景マニア垂涎の地となっています。そのなかでザ・ウェーブと並ぶと称されるのがホワイトポケット(White Pocket)です。今現在、立ち入り許可や人数制限はなく、カナブ(Kanab)あたりから出発するガイドツアーに申し込めば誰でも行くことができます。

■ホワイトポケット  White Pocket

ホワイトポケットの景観を説明すると、脳みそのような形状の白い岩肌が広がり、その下には朱色と白のマーブル模様がうごめく砂岩層があります。正直この地形がどのようにしてできたのか私にはわかりません。ネットで調べてみても確からしい答えはなく、たぶん専門家の本格的な調査もまだ入っていないのでしょう。そのなかで一番納得できる仮説は、分厚く積もった砂の層が地震か自重によって崩れ、下層と上層がまじりあってできたとするものです。しかしもしそうだとすると、下の写真にも写っている斜交層理をどう説明するのか?などの疑問がわいてきます。現場では時間が限られるなかで撮ることだけで精一杯だったので、今こうして自宅で写真を見ながらその成り立ちについての推測を楽しんでいます。

自由奔放な造形を目にし、大地がふざけて作ったのではと思いました。その大きさと度の外れぶりに思わず笑ってしまいました。

ホワイト・ポケットの表面はこのような白いブレインロック(直訳すると脳みそ岩?)で覆われています。この光景、撮りながら脳裏をよぎったのは、北海道・美瑛町の丘の雪景色でした。

ブレインロックの下は、筋肉を思わせるような朱色から白のマーブル模様の砂岩に変わります。

どこを見ても興味が尽きず、楽しい時間でした。

画面中央の下段、左から右に上がっている筋のは砂岩脈の跡? 液状化でもあったのでしょうか。

漫画「進撃の巨人」に出てきそうな筋肉もどきの模様です。

■ホワイトポケット  点景

国道から国定公園内の林道へ。またこの辺りは整備されている方で、後半は悪路の極みでした。旅行者が立ち入るところではなく、ガイドツアーを利用しましょう。

ガイドさんが運転する大型の4WD車。この車でも雨の後のぬかるみは走れないと言っていました。

国定公園入口から約1時間、ようやくホワイトポケットの駐車場(といってもただの空き地でトイレなどなし)に到着です。

配られたお弁当を食べ、5~6人のグループに分かれてそれぞれのガイドさんと共に歩きます。前方に見えるのがホワイトポケットの核心部!

ブレインロックを目の当たりにして全員が呆然としています。

筋肉模様の巨大な岩の上をガイドさんの先導で歩きます。現地滞在時間は2時間程度でした。風があったので気持ちよく歩けました。

■ポウ・ホール Paw Hole

ホワイトポケットから国定公園入口に戻る途中で、ポウ・ホールに少し寄り道をしました。赤い砂岩でできたさまざまな大きさの円錐台(先のない円錐形)の岩塔が並んでいます。その成り立ちは、少し硬い砂岩層が、その下の層を雨による侵食から守ったことでした。傘を差して下の層を守るようなイメージです。また岩塔の表面にみえる渦巻の模様は、堆積時に地層のなかにできた斜交層理によるものです。

ポウ・ホールの全景です。中央にひときわ大きな円錐台の岩塔(ビュート)がそびえ、それを囲むように小さな岩塔が並んでいます。

枯死した樹木を前景に撮影。

中央の大きな円錐台の模様を望遠レンズで引いてみました。斜めに砂が堆積した時にできる斜交層理が見られます。

小さな岩塔に近寄ってみました。上に乗るのが侵食を防いだ硬い層です。また斜交層理が円錐に削られることで、こんなにもおもしろい模様になるのかとあらためて感心しました。

ポウ・ホールからさらに林道を走った先にあるレッド・ブレインロック(赤い脳みそ岩)。

車窓からはさまざまな色の地層が見えていました。バーミリオンクリフ国定公園を満喫してカナブの町に戻りました。

ブライス・キャニオン国立公園  Bryce Canyon

グランド・ステアケースの最上層にできたのがブライス・キャニオンで、約6000~4000万年前のクラロン層と呼ばれる赤系の堆積岩が侵食されました。当時はコロラド高原を含む北米大陸全体が大きく隆起をした頃で、クラロン層は海成層ではなく、陸化した後の湖底にできた堆積岩です。

展望台からは円形劇場のような谷間いっぱいに、フードゥー(Hoodoo)と呼ばれる土柱が林立しているのが見えます。土柱は地層中の硬い層がその下の柔らかい層を雨などによる侵食から守ることでできます。形成年代の古い硬くしまった地層では見ることはなく、どちらかと言うとできたてで岩の硬度にばらつきがあるような場所で見かけます。

ここもグランド・キャニオンおなじく、いくつかの展望台とそれぞれをつなぐリムトレイルが設けてあります。ブライス・キャニオンの場合は各展望台で高低差があり、サンライズポイント、サンセットポイント、インスピレーションポイント、ブライスポイントの順に高くなります。フードゥーを近くに見る(撮る)ならサンライズポイントからサンセットポイント、大観として俯瞰するならブライスポイント、インスピレーションポイントはその中間といった感じです。

ブライスポイント(Bryce Point)から俯瞰した土柱群です。画面左に写る岩壁には、土柱になる一段階前の様子が見えています。

ブライスポイントから見た夕日を浴びるフードゥー群です。雪まじりの悪天で夕日はあきらめていたので、天気の急な回復に感激しました。

サンライズポイント(Sunrise Point)とサンセットポイント(Sunset Point)の中間付近のトレイルより。このあたりは谷底に下るトレイルの出発点でもあるので(この日は降雪で通行止め)、間近に最前列のフードゥーが見えます。写真撮影を目的とする場合は、そのあたりを考慮して場所を選ぶとよいでしょう。

ブライスポイントから見た夕闇迫るフードゥー群です。ブライス・キャニオンで一番撮りたかったのは、画面全体にフードゥーが整然と並ぶこのシーンでした。光がないこの時間帯に撮れればと思っていたので祈願成就です。ただ残念だったのは、5月末ながら降雪があったことです。風景写真としては稀有なチャンスとして喜ぶべきでしょうが、地形写真に季節感を入れたくない私にとってはマイナス要因でした。

インスピレーションポイント(Inspiration Point)より望遠レンズで見たフードゥーです。もともとの地層の層理面が個々のフードゥーの形に残っています。並んだことによって生まれるリズム感こそがブライス・キャニオンの魅力だと思います。

■ブライス・キャニオン 点景

いよいよ車窓にフードゥーが現れはじめ、目的地が近いことがわかります。

ブライスキャニオンのビジターセンター。レンジャーによるインフォメーションセンター、お土産売り場、地形についての展示コーナーなどがあります。

ビジターセンターの地質関連の展示コーナー。グランド・ステアケースの紹介。

インスピレーションポイントの展望台。

ブライス・キャニオンの標高は、最高地点付近で2700mあります(グランド・キャニオンで2000m)。5月末でも寒気が入ると雪が降るようです。朝や夕方の撮影にはダウンを着込んでいました。

レイクパウエル  Lake Powell

コロラド川をダムで堰き止めてできたのがレイクパウエルです。今回は湖自体を観光することはなく、アンテロープキャニオンやバーミリオンクリフ国定公園への起点として利用しました。泊ったのはレイクパウエルリゾート(Lake Powell Resort)、部屋から湖の風景が一望できる素敵な場所でした。下の写真はすべてホテルの横の湖畔から撮ったものです。

対岸に遠くビュート(浸食により残った岩峰)が見えています。アメリカ中部の乾燥地帯を象徴する地形と言えば、やはりこのビュートになるのではと思います。

対岸の岩峰。

夜明け前の湖畔。

ホテルの部屋から見たレイクパウエルの夜明けです。

ご来光とレイクパウエル。

ラスベガス Las Vegas

グランドサークルの起点と終点になる街がラスベガスです。日本からの直行便がないので、ロスアンゼルスから国内線を乗り継くことになります。せっかくのカジノの街ですが、到着した日は時差で、帰国する前日は旅の疲れでとてもそのような気分にはなれませんでした。せめてと思い疲れた体にムチ打ってベラージオ前の噴水だけ撮りに出ました。

飛行機の機内から見たラスベガスの街は印象的でした。砂漠の地形を眺めながら写真を撮っていると、何の前触れもなくいきなり街が現れます。それがラスベガスなのですが、広大な砂漠に薄い敷物を敷いたような印象でした。大きな存在感の砂漠と、そこに根を張ろうと頑張る人間の力比べを見たような気がしました。

旅のスナップ

ロスアンゼルスの空港にて

ラスベガス空港の到着ロビー。

黄金に輝くトランプタワー。この時、主は日本に外遊中でした。

夜のラスベガス。写真で見ると恥ずかしくなりますが、実物は案外・・・。

宿泊したルクソールのロビーです。カジノは撮影禁止なので天井側を。

ホテルの部屋から見た夜明け前のラスベガスの街

現地ガイドさんとバスのドライバーさん、そして日本からの添乗員さんと。

アメリカの国道風景。変化がなく運転すると眠くなるだろうなあと思いました。

旅先で車窓の風景を見ることは大切だと思います。その土地の平均化されたイメージが脳内に残るので。

なぜかターミネーターのあのテーマ曲が頭の中で流れていました。

広大です。この岩山ひとつで日本なら観光資源になるかな。テーブル状になった岩山を地形用語ではメサと呼びます。

止まった時間の風景も各所で見かけました。

スーパーの店内。

レイクパウエルリゾートの部屋です。

ブライスキャニオン近くのモーテルの部屋です。

初日の夕飯。疲れていたので・・・

分厚過ぎるステーキ

巨大すぎる鶏もものロースト。

ロスに向かう機内から見た砂漠

取材日:2019年5月23日~30日

ジオスケープ・ジャパン 地形写真家と巡る絶景ガイド

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コメント

  1. ヤマザキヒデアキ より:

    先生、地質と芸術のコラボありがとうございました。楽しく拝見し、読ませていただきました。

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