海岸沿いの地形を撮る場合、観光遊覧船に勝る撮影ポイントはない。ただ船上からなので、被写体との出合いは一瞬で終わる。地形を分析する冷静な視点と、その造形性を見抜く写真家的な視点の両方で、それこそ一気に撮影する。最近ではこの「居合抜き」的な撮影自体を楽しむようにすらなった。
【蘇洞門】
天気の良い日を選んで小浜港に行っても、風向きが悪いと波が高く欠航していることがしばしばで、蘇洞門巡りの観光船の運航率は、とても低い印象しかない。その日本海の波に磨かれたのが、荒々しくも美しい蘇洞門の岩礁である。白い岩は、黒雲母花崗岩であり、およそ7000万年前に貫入したマグマが地下で冷えてできたものだ。方状節理の割れ目に沿って浸食や崩落するので、鋭角的な断崖や四角い窓状の海食洞が見られる。