沖縄本島の地形巡り　沖縄県

浜比嘉島のキノコ状の岩。波と潮汐によって削られた岩の窪み(ノッチ)が拡大してできた不思議な造形。沖縄の岩礁ではよく見られる。

本島中南部の琉球石灰岩が土台となる景観。｢山頂｣という高まりはなく、台形状をした丘陵地が続く。道路が丘を登り、住宅地や畑がその上まで広がっている。

沖縄自動車道の石川インター手前で、はじめて｢山｣が車窓に現れる。ここを境に沖縄本島の地質が変化する。

最近は古宇利島や美ら海水族館がある本部周辺に人気を奪われた感があるが、沖縄本島を代表する景勝地といえばこの｢万座毛｣であろう。琉球石灰岩の代表的景観である。波に削られた窪み(ノッチ)や大穴(海食洞)が絡み合い迫力ある奇景を見せている。

写真の勝連城をはじめ沖縄の多くの城(グスク)の城壁には、琉球石灰岩が使われている。加工しやすい岩質が、独特の曲線を生かした構造に繋がったのだろう。

琉球石灰岩の表面は、酸性の雨などによる溶食によりトゲトゲになっている。ビーチでは不意に素足に当たるとケガをする。

形成されずに積み上げられる琉球石灰岩の石垣。沖縄らしい赤瓦屋根の家屋との相性は抜群。

琉球石灰岩の採石場。｢無尽蔵｣というイメージ。

研磨され美しい模様が生かされた敷石。美ら海水族館にて。

ギーザバンタの海岸線で見つけた巨大なポットホール。写真の左上、岩のひさしの下からは地下水の湧き出しと鍾乳石が見える。

御嶽の最奥にある三庫理(サングーイ)。琉球石灰岩の巨岩ふたつが寄り添うように立っており、その間の空間が三角形の回廊となっている。

自然が作った空間を巧みに生かすことで、聖域の気配を高めている。

寄満(ユインチ)と呼ばれる拝所。オーバーハングした岩の天井と下がる鍾乳石から、ここがかつて地下の鍾乳洞であったことがわかる。鍾乳石の先端は、戦中の米軍の艦砲射撃による爆風で欠損した。

亜熱帯の植生の｢生｣の状態が保たれているという点でも、御嶽の空間はとても貴重となっている。

クラゲ状になった見事なつらら石。高温多雨な沖縄の気候が、地上の石灰石を溶かし、地下に大量に流れ込んで多数の鍾乳石を作った。

折れたつらら石の先には、鍾乳岩の成分(炭酸カルシュウム)を含んだ水滴が溜まり、再生が始まっている。

日本最大と言われる畔状の鍾乳石(リムストーン)。見どころの数が多く、本州の鍾乳洞2～3箇所分巡ったような満腹感がある。

天井が抜けた鍾乳洞に根を張るガジュマルの巨木。そのスピリチュアルな光景が話題となり、人気スポットとなった「ガンガラーの谷」。

「嵐」のCMロケに使われたことで有名になり、古宇利島の人気をけん引する存在となった｢ハートロック」。溶食によってできた細かな岩のアウトラインに惹かれる。CMでは、ふたつの岩を重ねるとハートに見えると紹介されたが、岩と岩のあいだの空間も逆さのハートに見える。

キノコ状の岩ができる理由は、波打ち際の岩礁を見ればわかる。波に削られて海面の高さに｢窪み｣ができている。波食窪(はしょくくぼ)、ノッチと呼ばれる。

倒れたキノコ岩(本島南部 新原ビーチにて)。波食が進み、支柱がキノコの傘を支えきれなくなると倒壊する。いずれはハートロックも･･･。

ハートロックの隣、トケイ浜にあるポットホールの奇岩。この他にも穴のあいた奇岩が多数ある。

満潮時、波がポットホールを濡らしている様子を見ると、こうして穴が開いたのかと思いたくなるが、それは間違い。

遠い未来、隆起して海食台となる平らな岩礁には、すでに無数のポットホールが開いていた。

隆起した岩礁に見られる甌穴の跡。雨水などによる溶食は引き続き継続中と思われる。

背後の岩礁から崩れて横倒しになったポットホールのある岩塊。トケイ浜のポットホールもこうしてできた。

やんばるの山々には、亜熱帯の植物から照葉樹の濃い緑が一面に広がっている。国内でこれだけの規模で照葉樹林が残っている場所は少なく貴重。

座間味島付近に突き出た男岩(うがん)。砂泥互層の地層がくっきりと見える。

渡嘉敷島の南端、ウン島の断崖に見られる褶曲のある地層。

座間味の港。

慶良間ブルーと称される青い海が広がる。

2月から4月は、慶良間諸島から沖縄本島付近の海域にザトウクジラがやって来る。

大石林山の展望台から見た辺戸御嶽の断崖と太平洋。断層により隆起したと言われている。

山口県の秋吉台で見られる岩は丸味を帯びているが、多雨と高温による激しい溶食によってここの岩はどれも鋭角的に尖っている(ピナクル)。本州のものは温帯カルスト、沖縄は熱帯カルストの北限と言われている。

日本唯一のタワーカルストと言われる大石林山の｢悟空岩｣。タワーカルストとは、溶食により円筒の塔状に石灰岩が残った地形。中国の桂林に見られる岩塔がタワーカルストの体表的な景観。悟空岩はそれに比べたらはるかにスケールダウンするが、一応タワー状になっている。

遊歩道で見られる絡み合う亜熱帯の森と石灰岩のピナクル。上質なやんばるの森の景観を、安全に感じられるという点でもおすすめの観光施設。

大石林山の入場施設内にある石の博物館。沖縄の地史や地質をはじめ、それらを活用した文化など幅広く紹介されている。入場無料。

石灰岩の海食崖と背景に見える辺戸御嶽(辺戸岳)の岩峰群。

辺戸岬の壮絶な岩壁と太平洋の荒波。沖縄のリゾートイメージとは程遠い険しい景観が広がる。

青っぽい色をした岩が、プレートに乗ってやって来た3億年前の石灰岩。茶色い岩がこの地で150万年前に堆積してできた琉球石灰岩。新旧の石灰岩が重なる光景が見られる。

本部町の山里地区に見られる円錐カルスト地形。高温多雨の環境で見られる熱帯カルスト地形のひとつで、石灰岩層が溶食により円錐形の形で地上に残ったもの。樹木の下はピナクルが延々と連なっている。

本部町の市街地から見上げる円錐カルストの山並み。これがさらに発達したものが桂林などで見られるタワーカルストになる。

砂泥互層の褶曲。天仁屋集落から干潮時のみ通行できる海岸線をバン崎まで歩く。

名護市のバン崎にある褶曲の断崖。そびえ立つ断崖一面の褶曲は言葉を失うほど圧巻。

嘉陽層からなる比地大滝は、落差26ｍの沖縄本島最大の滝。駐車場から片道1.5ｋｍ、ゆっくり歩いて60分の行程。

滝の下にある砂泥互層の地層のストライプ模様。

手軽に見られる嘉陽層の褶曲として、国道331号線の脇道沿いにも露頭がある。名護から来ると底仁屋の手前で道がＹ字になっており、その分岐に褶曲の道案内が出ている。名護の水道施設が目印。

林道の側面に現れた嘉陽層の褶曲。巨大な地層のうねりが見られる。定期定期に雑草などを取っているのか、とても観察しやすい露頭。

備瀬の浜から見た夕日と伊江島のシルエット。平らな島の広がりに対して、唐突な城山の突き出し方が印象的。

標高172ｍの城山山頂より。サトウキビをはじめ、さまざまな畑のモザイク模様がとても美しい。

本部港から出ているフェリー。伊江島は本島から約9ｋｍ、片道30分の近さではあるが、離島ならではの｢のんびり｣感が味わえる。

伊江港入港寸前のフェリーから見た城山。

間近で見るとほとんど北アルプスの槍ヶ岳のよう。城山は全山が硬質なチャートでできている。もともとここにあった岩ではなく、海洋プレートによって運ばれてきた。

おもしろいのは島の年齢より、上にある城山のチャートの方が7000万年ほど古いというと。異質な出会いが伊江島の個性的な景観を作ったと言える。

登山道脇にある層状チャートの露頭。

私が登ったのは3月でしのぎ易かったが、真夏にここを登るのはかなり大変かと･･･。

島の南側の海岸線にあるニヤティア洞窟の入り口。

内部は広い空間となっており、戦中は多くの人が避難をした戦跡でもある。

鍾乳石が垂れた神秘的な空間に拝所が設けてある。

子宝伝承のある｢力石｣

湧出展望台から見下ろすと、ちょうどキノコ岩ができる過程が並んでいるように見えた。もともとは①のように隆起した海食台から始まり、波による浸食で海食台が小さく分かれ②、残った部分が足元が削られることでキノコ状となり③、やがて支柱が細くなって倒れるか、消えてしまう④。

伊江ビーチの青い海。対岸には本部半島が見えている。