甌穴の断面が、川の浸食によりできた断崖に見えている。こうも見事に穴が彫れていくものかと、惚れ惚れと見ていた。
甌穴は、岩の窪みにはまった石が水流によって回転し、徐々に深くなってできる。しかし、ここまで深い穴はどうやってできるのだろう? この細く深い穴の底では、大雨のあとの濁流でさえもその力は届かないのではないか。
【滝の拝】
滝の拝は、紀伊半島最後の清流と言われる古座川の支流・小川(こかわ)川にある。小さな滝が掛かるが、見所は川床一面に広がる無数の甌穴群である。量だけではなく、その造形性が際立って美しく、国内屈指の甌穴の見学地だと思う。
文献・資料には砂岩泥岩互層とあるが、滑らからな岩の表面の印象からは、一見したところそうは見えない。隆起する前、地中で高温の熱水にさらされることで、硬質な岩に変化したと考えられている。