旭岳に登った時の写真を見返すと、撮ったカット数の4割をこの火山弾に割いている。火口から飛び出し、落下して直ぐに冷えて固まった滑らかな表面と、その内側でしばらく高温を維持してうごめいていた溶岩の様子が質感の対比となって現れている。特に滑らかな表面が細かく割れずれているが、これは内側の溶岩がまだ可塑性をもっていた証である。岩を見る角度や光の強度を変えながら、どうしたらそれが伝わるかを考えているうちにカット数が増えてしまった。
【大雪山 旭岳】
旭岳の標高は2291mで、大雪山系のみならず北海道の最高峰である。広大で緑が深く、高山植物の宝庫という印象がある大雪山だが、旭岳はそれとは対照的に現役の活火山としての荒々しさを見せている。ロープウェイの終点である「姿見駅」からは、火山らしい円錐形の山容と水蒸気爆発により山が崩れてできた「地獄谷」の全容が見える。旭岳の登山は、地獄谷からの硫黄臭を嗅ぎ、噴気音を聞きながら、火口壁を眺め、足元に転がる火山弾やスコリアを踏みしめる、五感で活火山を感じながらの登行となる。