風雪が荒れ狂う鹿島槍も、3月に入ると移動性高気圧が周期的にやって来るようになり、その姿を拝めるチャンスが増える。五竜岳遠見尾根から鹿島槍北壁にかけては、北風に吹き飛ばされた雪が大量に積もり、ヒマラヤの氷壁を見るようだ。しかし、もう半月もすると春の気配が北アルプスの高峰にも訪れ、この切れ味がなくなってしまう。無駄を削ぎ落とした厳しい地形を撮れるのはこの一時だけ。
【鹿島槍ヶ岳】
鹿島槍ヶ岳は、北アルプスの北部・後立山連峰にある秀峰。標高は2889mでわずかに3000mには届かない。また山頂がふたつ並んで聳える双耳峰でもある。山体のほとんどは花崗岩からなるが、山頂付近には、火山噴火の際の噴出物が残る。この岩を調査した結果、200万年足らずの間に、東側から山脈を押す大きな力を受けて、めくれ上がるように隆起したことがわかった。また北壁の下部のあるカクネ里の大きな雪渓は、氷体の動きが確認され氷河であることが判明した。