桃洞の滝 秋田県北秋田市

目次

訪問前に桃洞の滝の写真はたくさん見ていたのでその形状は知っていました。しかし実際の滝はその印象よりもはるかに大きく、その造形は二次元の写真では伝え切れないほどに神秘的であり、エロチックでした。

スタートは森吉山野生鳥獣センター

この滝の事を知ったのは、20年くらい前に出版された本で、日本中のブナ森を訪ねて歩いた人の紀行文集でした。掲載されていた滝の写真に衝撃を受けましたが、さらにそこに至るブナの森についても最上級の評価が記されており、秋田の山奥にあるこの名もなき滝に対して憧れが募りました。

結局対面するまでに20年を要しましたが、その間にこの名もなき滝は、秋田を代表する人気の滝になりました。ネットを中心としたクチコミです。ブナの訪問記にあった登山口は「クマゲラセンター」でしたが、今では立派な「森吉山野生鳥獣センター」に変わっています。

施設が新しくなり、歩く人が増えても、ブナの森自体は、おそらくその本が書かれた当時と変わらないのでは、と思います。森から感じる純度の高さは、東北のブナ林のなかでもトップクラスで、当日は桃洞の滝を忘れるほどにブナの森の写真を撮っていました。アプローチの良さまで考慮すると本当に最高ランクのブナ林だと思います。

桃洞の滝までは、ほぼ平坦な道を約4km、1時間ほど歩きます。道案内の道標もしっかりしており、事前に地図でルートを確認しておけば道に迷うこともありません。ただ大雨のあとなどは、桃洞の滝周辺の水量が増えるので入渓禁止です。

太平湖と八幡平方面の山々。

スタートとなる森吉山野生鳥獣センター。

トレッキング道の入口。桃洞の滝まで4km、約1時間。

ブナの中を歩く。

立川橋を渡ってノロ川沿いのブナ林の道へ。

一級品のブナの森を歩く

立川橋を渡ると、左手にノロ川が現れます。ここから先、深みを感じる素晴らしいブナの森が続きます。赤水渓谷の分岐を右に行くと、間もなく滝音が聞こえてきます。

赤沢渓谷との分岐。桃洞の滝はここを右へ。あと20分。

桃洞横滝。小さな幅の広い滑滝。この時は散った落葉が水面で回ってとても美しかった。

唯一の渡渉点。これを渡るといよいよ桃洞の滝の滝音が聞こえてくる。

神秘の滝を前に

この滝には「女滝」の別名があり、子宝祈願など生殖にまつわる信仰を集めているようです。全国の岩巡りをしていると、このような対象となっている奇岩を多数見掛けますが、そのほとんどが岩に入った縦のクラックに対してであり、男の子が「縦線」で描くあの落書きの発想と似ています。それに対して、この滝は西洋美術のデッサンを学んだ者が彫ったような肉感的なリアルさがあります。

もちろん卑猥さなどは全くなく、美しい彫像を見ているかのようです。この造形を生み出したのは、「玉川溶結凝灰岩」と呼ばれる火山灰が降り積もってできた溶結凝灰岩です。岩に適度な硬さがあったことで、滝の造形ができたのでしょう。

桃洞の滝の柔らかい曲面は、そのまま渓谷全体の凝灰岩へとつながっていきます。その空間の底を歩ける幸福感もこの滝を訪問する魅力のひとつとなっています。

取材日:2016年10月26日

[mappress mapid=”15″]

ジオスケープ・ジャパン 地形写真家と巡る絶景ガイド

▼各SNSにこの記事をシェアする

画像の無断コピーはご遠慮ください。 Please do not copy unauthorized copies of images.