はっきり言って穴だらけの外観は不気味である。悪寒が走ると背を向ける人も少なくない。でも岩に近寄り、虫喰いの穴の奥をのぞきこむと、その下には表面を支える岩の支柱が網の目状に広がっており、繊細で不思議な造形である。
【高池の虫喰岩】
現在、紀伊半島には火山活動は見られないが、かつて(1400万年前)には巨大なカルデラが存在した。その頃の火山活動の名残が地表に現れ、今の熊野エリアの観光資源となっている。高池の虫喰岩もそのひとつで、流紋岩質の火山噴出物が固まってできた岩からなる。虫喰いの穴ができたのは、岩の表面から水分が蒸発する際に、小さな塩分の結晶ができ、それが成長する過程で岩の粒子を剥離したためとされる。微細なひとつぶの粒子の剥離が永年続いた結果、このような虫喰いの穴があく。塩類風化、またはタフォニと呼ぶ。